好きな小説とおばあちゃんの話
私は小学生高学年の頃からずっと梨本香歩さんの『西の魔女が死んだ』という小説が大好きでよく読んでいた。
ハマった年の読書感想文はこの本で書き、月一の頻度で読み返していた。
しかし中学生になり、忙しくなり、小説に手が伸びる頻度が減っていってしまった。
さらに読む小説のジャンルも変わっていってしまった。
もう一度この本を手にしたのは、私が中学生の終わり頃、
学校に通えなくなったときだ。
学校に行かず、することも無い惰性の合間に部屋を掃除していたら、懐かしいその本が出てきた。
つい手に取ってそのまま開いてしまう。
読み始めて、冒頭に今の自分を重ねてしまう。
そのまま部屋の掃除を忘れてしっかり読みふけった。
最後まで読んで、自分の感性がだいぶ変わっていることに気がついた。
小学生から中学生なんてたかだか3年くらいしか経っていない。
しかしされど3年、その間に少しわかることも増えてきていた。
この主人公がどれだけ寂しい思いをして、魔女がどれほど優しいか。
この小説を読んだ私は部屋の片付けもそのままに、母親の所へ飛んでいって、明日おばあちゃんちに行きたいと言った。
私のママのママは私の家からさほど遠くないところに住んでいて、車が運転できないおばあちゃんを私の母親がよく買い物に連れ出していたのでそんなわがままはすんなりと通った。
私のおばあちゃんは魔女と呼ばれてはいないが、植物や虫に詳しくて、あっという間にたくさんの料理を作ってしまう。私の中の魔女の条件にはしっかりマッチしていた。
そんな自分のおばあちゃんと小説の中の魔女を重ねてしまい、私は祖母孝行をするようになった。
この小説の始まりであり、結末のようにいつ会えなくなってしまうか分からないから。
私は今実家から少し遠いところに出てきてしまった。
けれど連れてきた多肉植物の様子が変だとすぐおばあちゃんに連絡する。
使い方の分からない野菜のレシピを聞いたり、本当に他愛のない話もする。