霖雨の森にて、

独り言を、

金木犀

私は金木犀が好きだ。

香りに誘われてパッと顔を上げると小さな可愛い謙虚な花がはっきりしたオレンジ色で緑の中から語りかけてくる。

あの香りが鼻の奥を撫でる度、頭の中の過去のシャボン玉がポコポコ沸き立ってきて、色んな回想をみせてくる。

過去を刺激する香り。

自然と涙があふれる様な、少し切なくてもどかしくて、懐かしさでいっぱいになる香り。

そんな金木犀が好きだ。

 

自伝車をこいでいても、誰かと話しながら歩いていても、その香りがするとつい立ち止まって周りを見渡して探してしまう。

まあるい可愛い低い木の中にオレンジ色が咲き誇っていないかを。完熟したオレンジ色がポロポロとこぼれ落ちて辺りに鮮やかな絨毯を作っていないかを。

 

また金木犀が咲いている。