霖雨の森にて、

独り言を、

小説

今週のお題で小説①

私には行きつけのうどん屋さんがある。 会社の傍にある上、裏道のさらに奥にあるためほかの店と違い昼時でも空いていた。 それまでは空いていそうな店を探し随分遠くまで歩かなければならなかったので、直ぐにそのうどん屋へ通いつめるようになった。 何度か…

皕門時小説『人』

夕焼け小焼けでまた明日。 一人で坊やは何処帰る。 誰も居ない暗い家。 坊やにはちと広すぎる。 静かで暗い一軒家。 隣の家の窓から光。 楽しい声が漏れ出てる。 夕焼け小焼けでまた明日。 一人で明るいバスに乗り。 外の暗闇を睨みつけ。 明るさよりも暖か…

皕門時小説『♥』

昨日までこの部屋には愛が満ち溢れていた。 僕のじゃないコップで水を飲み、誰もいない部屋を眺める。 寄り添って並ぶ歯ブラシを一つだけ使い、僕の趣味じゃないシャツを着て、僕が好きだったわけじゃないピザトーストを作る。 僕のじゃない僕の部屋。 僕の…

皕門時小説『●』

満月、今月は見なかったな。 満月カレンダーを見ると、先週の火曜にマークがついていた。 その日、残業で疲れて地面ばかり見て帰ってしまった。 この街は明るすぎて意識しないと月を見ない。 月なんてなくても明るい。 あのビルの輝きを美しいと思わなくなっ…